韓国視察報告~社会的企業について

2013年1月1日 09時44分 | カテゴリー: 活動報告

「社会的企業」とは、「ソーシャル・ビジネス」とも呼ばれ、様々な社会問題の解決を目的として収益事業に取り組む事業体のことです。ボランティア活動が無償による奉仕を基本としているのに対し、社会的企業は有料のサービス提供により社会問題の解決を目指しています。また、単なる営利企業とは異なり、利益第一でなく、社会的課題の解決というミッションの達成を最優先している所。

 

行政が担いきれない社会問題の解決やきめ細やかなサービスが提供でき、雇用の創出、地域コミュニティの活性化、さらに地域経済の発展のためにも、人の生き甲斐(居場所)などをつくり出すということで、ソーシャルビジネスの必要性が注目されています。(コミュニティビジネスとは、地域が抱える課題を地域資源を活かしながらビジネス的な手法によって解決しようとする事業のこと。新しい公共(行政コストの削減、)。コミュニティ・ビジネスは一定の地域との結びつきが強い事業、ソーシャル・ビジネスという場合は(環境・教育など)地域を超えた事業)

 

世田谷区では、高齢者や障害者などへの公共サービスを住民自身の手で作り出し、区と協働しながら事業や活動を進めていく「地域住民運営型公共サービス」への支援を進めていこうとしています。取り組みが期待されます。

 

韓国では、1997年IMF危機(韓国が通貨危機(国家破綻の危機)を経験し、国際通貨基金(IMF)の管理に入った(資金支援))からの失業率7%超の多くの失業者と深刻な貧困問題への対策として、貧困層や障がい者などの社会的弱者への公共サービスの拡充と雇用創出のために、2007年にアジアで一早く「「社会的企業育成法」が施行されました。イギリスや日本の協同組合などへ視察。社会的企業が持続するための経営基盤を作るために様々な支援に取り組んでいます。そのために、多様な領域にわたる団体が、「社会的企業」を目指す動きが活発化し、2012年4月現在で認定社会的企業数は656社、予備社会的企業は1340社で、この5年で13倍に増えています。

 

最近は、各自治体でも条例を制定し、地域の雇用政策の中心として社会的企業育成に力を入れています。中でも先進的取り組みをしている韓国ソウル市の「ソウル市社会的企業課」、そして市民参加型シンクタンク「希望的製作所」、社会的企業育成法認定1号店のリサイクルショップ「美しい店」を視察しました。

 

◇希望製作所◇

「希望製作所」は、市民の日常生活での不満や疎外感を「希望の種」に変えいくために、2006年に『美しい財団』により、「仕事をつくること」、「会社を大きくすること」の支援を目的に立ち上げられた市民参加型シンクタンク。社会的企業の先進的事例で、国の認定は受けていない。

※『美しい財団』

:2000年に、市民活動のリーダーで人権派弁護士の朴元淳氏(現ソウル市長)を中心に財団法人として設立された。市民や企業から集めた寄付をもとに、市民活動へ助成する財団法人で、現在では年に100億ウォン(約9億円)の募金を集める規模になっている。(例えば「1%運動」:個人や企業が自分の収入から1%を寄付する運動)

多くの人からの「共感」を大切にし、かつてあった ‘分かち合い’の文化を韓国に広げ、リサイクル活動や、低所得世帯の子どもへの奨学金や、高齢者への食事の提供などの慈善活動を展開している。

 

「希望製作所」は、現在、会員は5000名を超え、地域活動の支援や市民社会づくりの担い手の育成など、市民の社会参加を促し、起業や経営基盤充実ための支援をしている。最近は、さらに福祉サービスや「社会的経済センター」の運営に取り組んでいる。

※「社会経済センター」

コミュニティビジネスや労働組合の設立への支援、資金の支援、経営コンサルティング、仕事開発、社会経済専門家の育成(無料で4か月間教育し、起業を支援)、成功例の周知、人材発掘、大企業への啓発活動(社会的企業への資金援助など)など。

さらに、自治体に予算を社会的企業にどのように使うかを提案をしたり、インターネット上で市民アイデアバンクを運営し、市民のさまざまなアイデアを社会をよくするために活用するなど活動を広げています。

 

【視察から得られたこと】

障がい者の雇用なども積極的に行っている。雇用問題を解決するだけでなく、地域の福祉サービスの担い手となっています。韓国は良いものはどんどん取り入れようとするエネルギーと柔軟さ。韓国に社会的企業を広げるために一役を担っています。

朴氏は、現在はソウル市長となり、「希望」という言葉をキーワードに、「市民参加」と「創造的で持続可能な雇用拡大」を進めるために、社会的企業支援に積極的に取り組んでいます。

 

◇美しい店◇

「美しい店」は、韓国の社会的企業育成法の認定第一号で、2002年に「美しい財団」により設立された。「誰もが簡単に、生活の中で実践できる生活文化運動」をコンセプトに運営されている。現在では、 韓国全土に126店舗展開し、年間売り上げは、285億ウォン。

お店の品物は、市民や一般企業から寄贈され(店に持参、宅配、町中のボックスなど)、必要な人に安い値段で販売し、収益は一人暮らしの高齢者や貧困層など社会的弱者へ配分している。また、第3国の支援として、フェアトレード運動を進め、ネパールのコーヒーなどを店舗で販売している。 販売、翻訳、法律、リメイクなど多くの仕事は、学生や主婦などの無償ボランティアで賄われている。ボランティアに参加する機会を提供することで、地域に関心を向ける人を増やしている。   

店舗のデザイン、接客、広報やマーケティングにも力を入れ、著名人からの寄贈などマスコミで話題を集めることで、認知度を高めることに成功した。店舗だけでなく、バスや子どもによるフリーマーケット、インターネット、などでも販売を進めている。障がい者や、出所者、アルコール中毒患者、精神障害を持つ人など社会的弱者の雇用も積極的に行っている。

最近は、リサイクルショップだけでなく、リメイクや古本カフェなども運営している。

○リメイク工房「エコパーティ・メアリ」(メアリは, 韓国語で「こだま」の意味)

寄贈されたもので販売できないものをリメイクし、オシャレなグッズとして生まれ変らせて販売しているリメイク工房。米国でも評価されニューヨーク現代美術館でも販売されている。古いソファの生地で作られたペンケース、キーホルダー、コイン入れ、男性用ジャケットとシャツで作られたバッグなどが売られていて、ど

○「美しい店 洋裁店」

‘ウェディングドレスコーナー’ を設置。売り場にはウェディングコーディネーターが常駐し、新婦にぴったりなドレスを推薦。今後 貧困層や障がい者の結婚式を支援予定。

 

【視察から得られたこと】

店は、明るく、デザイン的で、リユースの洋服や雑貨品、またフェアトレードの商品などがきれいに陳列されていました。また、店内には学生や主婦層など多くのボランティアの方が働いていました。

ソウル市内には、支店がいくつもあり、どの店舗も共通のマークが窓に貼られていて、様々な世代の方が利用されています。商品を提供する人、販売する人、買う人が循環し、マスコミなどを利用し、社会に上手に受け入れられている成功例として参考になりました。

 

◇◇ソウル市社会的企業課◇◇

「社会的企業育成法」

<対象>

・世帯月平均所得が全世帯月平均の100分の60以下の者

・高齢者、障がい者、性売買被害者

・移住してきた女性、農漁村就労者、長期期失業者など脆弱階層と認定された人

<種類>

・認定社会的企業」~国から認証を受けた社会的企業

:人件費(初期3年間)、税制(減免、社会保険料の支援)、購買(公共機関が

優先的に購入)、専門コンサルティング(会計や労務など)、資金融資などの公

的支援を実施。

・予備社会的企業~自治体の審議が通過し、国の認証準備過程に入った企業

 

○ソウル市独自の支援

Ⅰ.成長段階に合わせた総合支援

1.創業支援

1)意欲ある若年層を対象とした支援

        ・50チーム選び、創業のために3年間のカリキュラムを支援

       →優れた10チームには、創業資金(1千万ウォン)や海外研修などを支援

  2)企業の育成

        (例:都市農業、地域再生、環境にやさしい給食、地域医療など)

         →優れたビジネスモデル提案する50の企業を選び、1社あたり事業費

3千万ウォンを支援。モデル事業後、拡大のために1億ウォンを支援

 2.成長期の企業の競争力を高めるための支援

  1)技術革新に対する支援 (1社当たり3000万ウォンを支援)

  2)海外マーケティング支援

   →国際博覧会への参加費、ブースの設置費用を支援(1社当たり1000万ウォン)

  3)優れた製品やサービスの販売・広報の支援

   →インターネットや、地下鉄・バスなどに広告

  4)社会的企業博覧会(ソウル広場)の開催

Ⅱ.中間支援システムの構築

1.社会的企業開発センターを設置(2012年9月開所)

  →研究調査、事業の分析と評価、創業支援、人材発掘専門家の育成

2.地域の特性を生かした社会的企業の成長を支援

  →6つの区域別に事業を公募、選定、事業費の支給

(地域資源調査・成長支援)

 3.社会的経済アカデミーを運営(本人負担20%)

   →社会的企業の予備軍、最高経営者課程、実務者課程、専門家課程などの人材育成

(年830人)

→現場実習修了後創業支援

→専門家と学生とのネットワーク構築

Ⅲ.需要拡大のために、公共の消費市場環境を整備

 1.優先購入目標を作り、達成システムを構築(2012年に500億ウォン)

 2.専用オンラインショッピングを構築・運営

   →安定した販路を確保

 3.透明性の確保

   →ガイドラインを守らなかった企業への措置として、公共部門の購入対象から排除、

意識向上と実務教育の実施

Ⅳ.地域の環境整備

 1.まち共同体企業の発掘・育成

 →市民教育地域の活動家の育成・配置ネットワークの構築、創業支援

 2.協同組合の育成支援システムの構築

 ・・・2012年1月より5人以上なら誰でも協同組合ができるようになった 

  1)協同組合の活性化のための基盤の構築

  →市と自治区の職員教育市民教育及び学校教育プログラムの設置、

   経営コンサルティング及び会計教育の支援

 2)協同組合による公共サービスの運営のモデル作り

  →保育、環境に優しい給食、放課後学校など

  

【視察から得られたこと】

今年度より、人件費などのお金中心の支援から、自力で持続可能な成長ができるよう、教育や販売ルートなどへの支援へ方向転換しました。社会的企業は、脆弱階層の雇用の創出と社会サービスの提供において、政府の助成金に対する費用対効果(2009年度には2.8倍)が高いことから、ソウル市ではこの社会的企業支援に力を入れ、成果をあげています。

急速に経済拡大してきた韓国は、現在、格差が深刻な問題となっています。若年層の失業率増加、地域コミュニティの崩壊、非正規雇用の増加、高齢化などの様々な社会問題を解決するために社会的企業への期待はますます高まっています。また、社会的企業を通して、市民参加、新しまちづくりの担い手を増やしています。

世田谷区でも、子育て、介護などの福祉分野や再生可能エネルギーなどの環境分野など様々な分野において、区民、団体、行政等が協働した社会的企業の創出が期待されます。

若者や女性、団塊の世代など様々な区民やグループをつなげ、起業や人材発掘・育成、また空き家・空き店舗などを活用した活動の場など、社会的企業への積極的な支援を求めていきます。